お散歩をこよなく愛するライターで、シェア畑ユーザーでもあるヤスノリさんに、シェア畑での野菜づくりの様子をおすそ分けしていただく「ヤスノリさんのシェア畑」。最終回となる今回は、秋から大切に育てている越冬野菜の「イチゴ」のお話…イチゴ苗は寒い冬を無事のりこえられたのか?!
シェア畑に興味をもつきっかけはたくさんあると思うけれど、その中には、子供と一緒にやる農業、教育としての農を期待している方も居るのではないかと思う。実際、家族みんなで楽しそうに作業をしている姿を結構見かけて大変微笑ましい。
我が家もそういった期待は少しあったのだけど、何回か申し上げた通り、うちの子供達はあまり畑に来ない。「えー虫居るからやだ」みたいな。虫はさあ、居るよ。っていうか虫やだって言ったら地球の生物の半分以上が敵になるの分かって言ってる? 来ないって。子供、畑に来ないって。しかし何の問題も無かった。僕が楽しくやっているので何の問題も無い。世話したり、料理したり、人にお裾分けしたりするのが純粋に楽しい。
月並みな言い方だけど、まず大人が面白がるのがいいのではと思う。そうやっていると、子供達が「絶対わたしが収穫する!」とブチ上がる瞬間が来る、ことがある。我が家の場合は、夏はスイカ、冬はイチゴのときにそうなった。理由は、好きだから。好きだからってのは強い。そりゃそうか。僕も畑でスポーツカーとか採れたらたくさん収穫したいもの。こういうのが一個でもあれば、もう大成功ですよ。そういうわけで、去年の夏は満面の笑みでスイカを得た。
▲すごく嬉しそうだった。これで十分元は取ったな
そして11月、イチゴを植えた。クリスマスケーキに乗せようと子供が言っていたけれど、露地栽培だから無理だと伝えた。イチゴは越冬して、翌年の春に花を咲かせる。越冬野菜って面白いなと思う。年越しの瞬間を知っている。イチゴは除夜の鐘を聞くことができる。一方でスイカに紅白歌合戦を理解させるのは難しい。見たことないから。紅組と白組が戦うんだけどそんなにバトル感は無くて、歌と、あと全員でけん玉とかやって、とか説明してもいまいちピンとこないかもしれない。難しくてツルが余計に絡まっちゃう。
それで去年の秋にイチゴを植えたんだけど、そこは農初心者の僕ですから、早速ミスを犯した。
▲手際よく植えたんだけどね
ぺたんとした畝(うね)に注目していただきたい。イチゴは根腐れを起こしやすいので畝を通常よりも5~10センチ高くしろって教科書に書いてあるのに、ふつうの高さの、むしろいつもより低めの畝を作って植えてしまった。あの、なんだろ、初心者に求められているイチゴの作り方の注意点ってぶっちゃけそれくらいしかないんですよ。あとランナー(要らない茎)を切れ、くらいか。そのくらいしかないんです、多分。
だからまあ、それくらいちゃんとやれよっていう話なんですけど、いやあ、もうねえ、この一年、いろいろな野菜を植えまくったでしょ(数種類です)。もう慣れたもんですよ。何年農やってると思ってんだよ(一年です)。そういう慢心のもと、ぺらっぺらの注意力で普段通りに植えつけた。高いカップラーメンを「知ってる知ってる」って昔ながらの熱湯3分のノリで作っちゃうやつと一緒。いやまあ食べられなくはないけどさあ、その高いラーメンって、5分待って、スープを蓋の上で温めて、特製背脂を最後に入れて、秘伝スパイスは辛いからお好みで少しずつ入れて、すべて守ったときに最大のパフォーマンスを発揮するじゃないですか。「辛っ!」とか言って、それはお前が秘伝スパイスを全部ぶちまけたからじゃないですか。初心者における農の失敗というのはそういう小さな不注意の集合のような気がする。
ちなみに畑を見回すと、低い場所に植えられたイチゴがぽつぽつある。僕の仲間は確実に居る。カップラーメンをうまく作れない僕たちができることは、根腐れしないように祈ること。祈祷とかどうでしょう。毎月15日にてっぺんに穴の空いた大福を奉納する。これはイチゴを招き入れる意味があるとされる。豊作を願う祭りみたいなのは、こういうタイプの人たちによって作られ伝承されてきた可能性がある。ないです。
そんなわけで、我が家のイチゴ栽培はマイナス100点くらいからスタートした。ちょっと無理かも? という気持ちは少しあった。子供にも「イチゴってすごい難しいんだって。ならないかもしれないらしい」なんて予防線を張ったりした。
今年の1月、一斉にクタッとしたのでまさか……死? と思ったけれど、越冬で休眠中なのだそう。寝るな、紛らわしい。
▲寝てるだけだそうです
今年の冬は何度か雪が降った。そのうちの一回は首都圏でもけっこうな量が積もって、心配になって畑を見に行ったらイチゴが完全に雪の下に埋まっており、今度こそ……死? と覚悟した。
▲キャーッ! 成分的にはかき氷のイチゴ味!
い、いまたしゅけてあげるからね! と雪を、というか数日経ったからもう雪じゃなくてカッチカチの氷の板を全部どかしたんだけど、あとから菜園アドバイザーさんに聞くと雪が積もってもあまり問題ないらしい。イチゴは寒さに強いし、凍った雪をはがすときに茎が切れてしまうこともあるのでそのままでも良いそう。文字通り余計なお世話であった。
▲余計なお世話をした図
しかし雪をどかしたあとに現れたイチゴはいつもにも増してクシャクシャに縮こまっており、これは本当に寝ているだけなのかしら、もしかして……死? と思ったらそのうちガンガン花が咲き始めたので、本当に寝ていただけだった。イチゴ、死んだふりがうまい。
だから結果から言うと、幸い、低い畝による事故は起こらなかった。実は菜園アドバイザーさんから「この畑は水はけがいいから畝低くても大丈夫だと思いますよ」と言ってもらっていたんだけど、花を見るまではずっと心配していた。夢では数回イチゴが枯れて子供が泣いた。
▲お前のこと待ってたんだぜ
▲4月、果実が膨らみつつある
果実が膨らみつつある、そう言ったら子供も見に来た。そういえば去年の4月、シェア畑の見学へ来たとき、菜園アドバイザーさんにイチゴを食べさせてもらった。あれが、これか。今年は作る側に回っている。季節も巡った。そろそろ夏野菜の植え付けが始まる。二周目の農もぼんやり楽しみます。
ヤスノリ:
散歩が好きなので散歩のWebマガジンを主宰しています。ほかには散歩カードゲームや散歩の同人誌を作っていますが、ひょんなことから野菜も作りはじめました。農がいま一番面白いです。
シェア畑に興味をもつきっかけはたくさんあると思うけれど、その中には、子供と一緒にやる農業、教育としての農を期待している方も居るのではないかと思う。実際、家族みんなで楽しそうに作業をしている姿を結構見かけて大変微笑ましい。
我が家もそういった期待は少しあったのだけど、何回か申し上げた通り、うちの子供達はあまり畑に来ない。「えー虫居るからやだ」みたいな。虫はさあ、居るよ。っていうか虫やだって言ったら地球の生物の半分以上が敵になるの分かって言ってる? 来ないって。子供、畑に来ないって。しかし何の問題も無かった。僕が楽しくやっているので何の問題も無い。世話したり、料理したり、人にお裾分けしたりするのが純粋に楽しい。
月並みな言い方だけど、まず大人が面白がるのがいいのではと思う。そうやっていると、子供達が「絶対わたしが収穫する!」とブチ上がる瞬間が来る、ことがある。我が家の場合は、夏はスイカ、冬はイチゴのときにそうなった。理由は、好きだから。好きだからってのは強い。そりゃそうか。僕も畑でスポーツカーとか採れたらたくさん収穫したいもの。こういうのが一個でもあれば、もう大成功ですよ。そういうわけで、去年の夏は満面の笑みでスイカを得た。
▲すごく嬉しそうだった。これで十分元は取ったな
そして11月、イチゴを植えた。クリスマスケーキに乗せようと子供が言っていたけれど、露地栽培だから無理だと伝えた。イチゴは越冬して、翌年の春に花を咲かせる。越冬野菜って面白いなと思う。年越しの瞬間を知っている。イチゴは除夜の鐘を聞くことができる。一方でスイカに紅白歌合戦を理解させるのは難しい。見たことないから。紅組と白組が戦うんだけどそんなにバトル感は無くて、歌と、あと全員でけん玉とかやって、とか説明してもいまいちピンとこないかもしれない。難しくてツルが余計に絡まっちゃう。
それで去年の秋にイチゴを植えたんだけど、そこは農初心者の僕ですから、早速ミスを犯した。
▲手際よく植えたんだけどね
ぺたんとした畝(うね)に注目していただきたい。イチゴは根腐れを起こしやすいので畝を通常よりも5~10センチ高くしろって教科書に書いてあるのに、ふつうの高さの、むしろいつもより低めの畝を作って植えてしまった。あの、なんだろ、初心者に求められているイチゴの作り方の注意点ってぶっちゃけそれくらいしかないんですよ。あとランナー(要らない茎)を切れ、くらいか。そのくらいしかないんです、多分。
だからまあ、それくらいちゃんとやれよっていう話なんですけど、いやあ、もうねえ、この一年、いろいろな野菜を植えまくったでしょ(数種類です)。もう慣れたもんですよ。何年農やってると思ってんだよ(一年です)。そういう慢心のもと、ぺらっぺらの注意力で普段通りに植えつけた。高いカップラーメンを「知ってる知ってる」って昔ながらの熱湯3分のノリで作っちゃうやつと一緒。いやまあ食べられなくはないけどさあ、その高いラーメンって、5分待って、スープを蓋の上で温めて、特製背脂を最後に入れて、秘伝スパイスは辛いからお好みで少しずつ入れて、すべて守ったときに最大のパフォーマンスを発揮するじゃないですか。「辛っ!」とか言って、それはお前が秘伝スパイスを全部ぶちまけたからじゃないですか。初心者における農の失敗というのはそういう小さな不注意の集合のような気がする。
ちなみに畑を見回すと、低い場所に植えられたイチゴがぽつぽつある。僕の仲間は確実に居る。カップラーメンをうまく作れない僕たちができることは、根腐れしないように祈ること。祈祷とかどうでしょう。毎月15日にてっぺんに穴の空いた大福を奉納する。これはイチゴを招き入れる意味があるとされる。豊作を願う祭りみたいなのは、こういうタイプの人たちによって作られ伝承されてきた可能性がある。ないです。
そんなわけで、我が家のイチゴ栽培はマイナス100点くらいからスタートした。ちょっと無理かも? という気持ちは少しあった。子供にも「イチゴってすごい難しいんだって。ならないかもしれないらしい」なんて予防線を張ったりした。
今年の1月、一斉にクタッとしたのでまさか……死? と思ったけれど、越冬で休眠中なのだそう。寝るな、紛らわしい。
▲寝てるだけだそうです
今年の冬は何度か雪が降った。そのうちの一回は首都圏でもけっこうな量が積もって、心配になって畑を見に行ったらイチゴが完全に雪の下に埋まっており、今度こそ……死? と覚悟した。
▲キャーッ! 成分的にはかき氷のイチゴ味!
い、いまたしゅけてあげるからね! と雪を、というか数日経ったからもう雪じゃなくてカッチカチの氷の板を全部どかしたんだけど、あとから菜園アドバイザーさんに聞くと雪が積もってもあまり問題ないらしい。イチゴは寒さに強いし、凍った雪をはがすときに茎が切れてしまうこともあるのでそのままでも良いそう。文字通り余計なお世話であった。
▲余計なお世話をした図
しかし雪をどかしたあとに現れたイチゴはいつもにも増してクシャクシャに縮こまっており、これは本当に寝ているだけなのかしら、もしかして……死? と思ったらそのうちガンガン花が咲き始めたので、本当に寝ていただけだった。イチゴ、死んだふりがうまい。
だから結果から言うと、幸い、低い畝による事故は起こらなかった。実は菜園アドバイザーさんから「この畑は水はけがいいから畝低くても大丈夫だと思いますよ」と言ってもらっていたんだけど、花を見るまではずっと心配していた。夢では数回イチゴが枯れて子供が泣いた。
▲お前のこと待ってたんだぜ
▲4月、果実が膨らみつつある
果実が膨らみつつある、そう言ったら子供も見に来た。そういえば去年の4月、シェア畑の見学へ来たとき、菜園アドバイザーさんにイチゴを食べさせてもらった。あれが、これか。今年は作る側に回っている。季節も巡った。そろそろ夏野菜の植え付けが始まる。二周目の農もぼんやり楽しみます。
ヤスノリ:
散歩が好きなので散歩のWebマガジンを主宰しています。ほかには散歩カードゲームや散歩の同人誌を作っていますが、ひょんなことから野菜も作りはじめました。農がいま一番面白いです。