食育のために、何をしていますか?
この十年ほど、学校や家庭における“食育”の重要さが様々な形で語られてきました。
でも、「お子さんやお孫さんが通う学校では、そして、皆さんのご家庭では、食育のためにどんなことをなさっていますか?」と尋ねられた場合、「こういうことをしています」と明確に答えられるでしょうか?
ほとんどのご家庭において、答えは“NO”なのではないかと思います。
そもそも、食育とは?
2005年に成立した「食育基本法」では、食育とは、
●生きるための基本的な知識であり、知識の教育、道徳教育、体育教育の基礎となるべきもの
●単なる料理教育ではなく、食に対する心構え・栄養学・伝統的な食文化・食ができるまでの一次産品および二次産品の生産についての総合的な教育
●単なる料理教育ではなく、食に対する心構え・栄養学・伝統的な食文化・食ができるまでの一次産品および二次産品の生産についての総合的な教育
とされています。
「きちんと食べることが、子どもの心身の成長には大切なので、様々な面から食について考えていきましょう」ということは何となく伝わってくるのですが、何度か繰り返し読んでみても、「学校や家庭では、いったい何をどう指導して実践していけば良いのか?」「普段の生活にどう取り入れるのか?」が具体的には浮かんできませんね。
『刻まれた光 ~青少年の心の闇に真向かう神父の記録』
ここで1冊の本をご紹介しましょう。
※引用元:amazon
『刻まれた光 ~青少年の心の闇に真向かう神父の記録』という本で、カトリックの司祭である岡宏神父が記し、2007年に女子パウロ会から発行されたものです。
岡神父は、少年院などの施設を出所した後、行き場をなくした子ども達を引き受け、およそ30年にもわたって起居を共にされて来ました。
子どもたちが犯罪に走った背景やきっかけは、もちろんそれぞれに異なっていたのですが、彼らには、ある共通するポイントがあることに岡神父は気づいたと言います。
それは、どの子も例外なく、「お箸をきちんと持つことができない」「手ぬぐいをきちんと絞ることができない」ということでした。
これは、いったい、どんなことを意味しているのでしょうか?
“一緒に食べる”、それは、“子どもにきちんと目を向ける”ということ
箸遣いを教えるためには、親と子が一緒に食卓を囲んでいることが大前提となるでしょう。
また、たとえ一緒に食事をしていたとしても、親がテレビや新聞やスマホに気を取られていて、子どもの様子を見ていなければ、お箸の持ち方が違うと気づき、教えることは出来ません。
お箸を正しく持つことが出来ないという背景には、物理的に、あるいは精神的に、子どもが“個食”“孤食”をしているという事実があるように思います。
子どもにきちんと目を向けながら食事をしていれば、箸遣いなどマナーに関することだけでなく、「表情がいつもより暗いし口数が少ないのでは?」「最近食欲が落ちているようだ」など、“ちょっと気になること”が見えてくるでしょう。
そしてそれは、もしかしたら、いじめなどのトラブルを抱えているサインかもしれません。この段階で気づいてやることが出来るかどうかで、問題解決への道のりがかなり違ってくるはずです。
赤ちゃんや幼児の頃は別として、学齢期以降は、1日のうちで親子が同じことをして過ごすという時間がかなり少なくなってきます。
一緒に食事をするというのは、実はとても貴重な時間であると言えるでしょう。
共働きや残業などといった親の事情や、部活動や塾など子ども側の事情もあり、毎日必ず一緒に食事をするということを習慣にするのは難しいかもしれません。それでも、「週末は必ず家族そろって食事をする」など、可能な範囲で出来ることからやってみていただきたいと思います。
親子が共に過ごす機会を意識的に作る
こうして考えていくと、“手ぬぐい(タオル)をきちんと絞ることができない”というのも、親子が一緒にお風呂に入ったり、一緒に掃除をしたりといった時間が少なくなり、親子関係が希薄になってきたということの結果ではないかと推察できますね。
子どもたちは、親が思っているよりもずっと敏感ですから、箸遣いにしても、手ぬぐいの絞り方にしても、普段自分に目を向けることがほとんど無い親が付け焼刃で無理やりしつけようとしても、反発したり無視したりしてしまいます。
それよりも、「親が、自分に目を向けてくれている」「自分と一緒に何かをする時間を、親は心から楽しんでいるようだ」と感じることで、自分は愛されているのだと実感でき、親子のコミュニケーションが円滑になっていくように思います。
食育と聞くと、どうしても、「食べものの旬を知ること」「栄養バランスの良い献立を意識すること」等のテーマが浮かんできてしまいがちですが、まずは、「子どもと、視線や言葉を交わしながら、一緒に食事をする」ということから始めていけたら…と思います。
そして、「たまには一緒にお風呂に入る」、「一緒にテレビを観る」、「同じ本を読んでみる」等、少しずつでも、子どもと一緒に過ごす時間を確保していきたいものです。
さらに、「家庭菜園で一緒に野菜を育て、一緒に料理をし、一緒に味わう」という時間がもてたら、こんなに素敵なことはなかなか無いのではないでしょうか?
※「旬を知ること」も「栄養バランス」も、大切なテーマであることに変わりはありません。これらのことに関しては、また別の機会にお伝えしていきたいと思います。
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